食品貯蔵学研究室

Biochemistry of Food Preservation and Processing

 食品の品質向上を目的として、食品の加工、貯蔵中に起こる様々な変化を化学的、生化学、微生物学的に解析している。主なテーマとしては食品の非酵素的褐変(メイラード反応)に関する化学的研究、野菜や果物の酵素的褐変に関する研究などである。

 


トピックス

・野田響子さんが、26回日本メイラード学会(つくば市)において若手奨励賞を受賞。(201611月)

「ピロロチアゾールならびにピロロオキサゾール構造を有する新規メイラード黄色色素について―単離、構造決定、性状および生成機構―」

・筒浦さとみさんが、60回日本食品科学工学会(日野市)において第9回若手の会企業賞を受賞(20138

 「グリシンをにぎり飯に添加する意義−黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA産生の視点から―」

・能見祐理さんが、第19回日本メイラード学会(金沢市)において若手研究者奨励賞を受賞(200911

Xylose-lysine系メイラード反応から生成する新規低分子色素化合物とその誘導体」

 

1 スタッフ

教授    村 田 容 常

 

ポスドク 筒 浦 さ と み

 

 

平成2810月 鬼子母神の御会式を見に

 

 

  学生 (H27年度)

 

Drコース 3年生

      2年生

            1年生

Msコース 2年生 

      2年生

      1年生 

      1年生

      1年生

      1年生

学部    4年生 

      4年生 

      

3 歴 史

当時の家政学部食物学科に昭和52年東京大学より藤巻正生教授を迎え、栄養化学研究室、食品化学研究室、調理学研究室に次いで4番目の講座研究室として発足。藤巻正生教授は昭和57年より本学学長を務める。現在は講座制ではないため、教授1名で研究室として教育研究を行っている。

 

昭和52年 藤巻 正生教授 本間 清一講師 (家政学部食物学科)

 昭和57年 相田 浩 教授 本間 清一助教授 (家政学部食物学科)

平成 1年 本間 清一教授 村田 容常講師 (家政学部食物学科)

平成17年 村田 容常教授(生活科学部食物栄養学科)

 

 

4 最近の研究内容(詳細は村田容常のHPへ

食品中のメイラード反応(非酵素的褐変)

 多くの食品は、加工貯蔵もしくは加熱調理中に茶色く変色(褐変)する。パンやカステラの焼き面、醤油、ビール、コーヒーなどがその例である。この褐変反応は、後述の酵素が関与する褐変反応とは異なり、酵素が関与しない非酵素的な化学反応である。この茶色の色素は食品中の複数の成分の化学反応により形成されたもので、糖などのカルボニル基を有する化合物とアミノ酸などのアミノ基を有する化合物との反応により形成される。この反応のことをアミノカルボニル反応もしくはメイラード反応と言い、この反応により形成される色素の化学的・食品学的性状を研究している。対象としては、食品のモデル反応(カルボニル基:キシロース、グルコース、ビタミンC,フルフラールなど、アミノ基:リジン、システイン、タンパク質など)と実際の食品(醤油、ビール、コーヒーなど)の両者を用いている。各種クロマトグラフィーや機器分析などによりに色素の性状を特定しようとしている。今までにいくつかの新規な色素化合物を見出している。まずフルフラールとリジンの反応液から黄色物質Furpipate類を発見し、続いてキシロースとリジンの反応溶液からピロールメチリデンピロロン構造を有する一連の新規黄色色素(dilysyldipyrrolone類)を見いだした。また、最近システイン由来のジヒドロピロロチアゾール骨格を有する新規淡黄色色素も見出している。

 

酵素的褐変の食品学、生化学

 フェノール類(ポリフェノールなど)は食品の品質に大きく関わっている。例えば、野菜や果物を切る、つぶすと褐変する。これは酵素的褐変と呼ばれ、野菜や果物中のフェノール類がポリフェノールオキシダーゼ(PPO)により酸化され、次いで酸化により生成したキノン類が重合するために起こる現象である。我々はこの現象が最もよく知られているリンゴを題材として、生化学や分子生物学の手法を用いて、PPOを食品学的見地から研究した。まずリンゴ果実からPPOを初めて単一なタンパク質に精製し、その性質を明らかにしました。切ったリンゴを塩水につけると褐変しないのは、PPOがClイオンにより阻害され、かつ酸素の供給が制限されるためである。免疫組織化学的にPPOの組織内分布を調べ、褐変部位とPPOの存在部位が一致することも証明した。さらにPPOの発現制御についても研究した。次いで、カットレタスの貯蔵褐変の機構やその制御法についても研究した。このタイプの褐変ではカットにより誘導されるポリフェノール生合成が重要で、その制御法についても考案した。ポリフェノールの重合による褐変物質や様々な食品中のフェノール成分も化学分析している。最近はもやしの冷蔵褐変の研究も行っている。

 

 作成日 2017.2.9

 

 


 

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