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2017年度シンポジウム

2022年6月1日更新

(詳細は『生活社会科学研究』24号参照)

2017年6月3日(土曜日) 14時から大学本館306室にて、生活社会科学研究会シンポジウムが開催されました。学部時代を生活社会科学講座で過ごされ研究職についたお3人においでいただきました。それぞれが、どういうきっかけで研究職につくことになったのか、学部時代を振り返り、大学院時代にはどのような苦労があったのか、ワークライフバランス、そして、研究職の喜びと苦労についてお話しくださいました。学部時代の授業にどう触発されたのかなど、学生にはとても意義深い経験だったと思います。

  • 竹沢純子さん 国立社会保障人口問題研究所室長「国の研究機関で働く-進路選択から現在に至るまで-」

竹沢純子さんは生活社会卒業後、直接大学院に進み計9年間在籍、この間結婚、第1子出産を経て、現在の国立研究所に採用され「社会保障費用統計」の作成に従事されています。社会保障、特に家族政策の国際比較が研究テーマであり、博士論文は「家族政策にかかわる統計とその課題に関する研究」です。博士論文は就職後3年目の第2子出産直前に提出、論文審査・修正は、産休のみで職場復帰した後に、上司の理解と家族の協力を得て取り組み、産後10か月で博士号を取得されました。
学部時代の授業がいろいろな関心につながっていったという話もされました。学部で篠塚英子先生のゼミで研究職への志望を固めたといいます。大学院では永瀬伸子研究室におられ、お茶の水女子大学COE「ジェンダー研究のフロンティア」で行ったソウルと北京のパネル調査の実施と分析に、研究員として熱心に従事していた姿を思い出します。大学院博士課程3年目に親元から自立、3人で一軒家に共同生活する形で出費を工夫され、育英会奨学金とアルバイトで大学の近くで一人暮らしをはじめられたといいます。
40歳の時にご夫君とお子様を含めご家族4人でフランスパリのOECD雇用労働社会局社会政策課に出向されます。そこで社会保障、家族政策、女性労働、住宅の国際比較を研究され、大きいステップアップを体験されたと思います。
最後に3つの点を後輩に伝えられました。①ここぞというチャンスは確実につかみ、活かす。そのための計画、準備をしておく。 ②自分には出来ないと思うことにも挑戦してみることで、だんだんとこなす力、度胸もついてくる。③自分が第一人者になれる分野に狙いを定めて、専門性を高める。

  • 宇津野花陽さん 白鴎大学教育学部児童教育専攻専任講師 「研究職に就くまで―進路選択のひとつの事例として」

大学入学後のガイダンスで家庭科の教職課程について知り、家庭科教職をとられました。このことが進路選択の幅を広げたといいます。牧野カツコ先生に出会い、「家庭科教育法」の授業で家庭科に深く興味を持ち、家庭科教育を研究対象としますが、大学院時代は、研究と勉強が違うこと、研究の難しさを感じられたといいます。しかし現在は、大学教員として、小学校教員養成課程の家庭科の授業を中心に担当し、教育、研究、大学運営の仕事に忙しくされています。家庭を持ちつつワークライフバランスをとることは難しいとはいえ、教員はとりやすい方かもしれないといわれます。また、ずっと学び続けることのできる仕事であるということをおっしゃいました。
学部生には、大学で学ぶことはいろいろな形で将来につながっていく。だから恵まれたお茶の水女子大学の研究環境を生かすとともに、興味あることを楽しんでください!というメッセージをくださいました。

  • 藤田智子さん 東京学芸大学教育学部生活科学講座准教授「進路選択といま―生社での学びと家庭科教員免許を活かした大学教員としての仕事」

藤田さんは、卒業後出版社に就職されましたが、1年ほどで大学院に戻っておいでになります。お母さまが家庭科教員であり、その影響もあって、家庭科教育及び家政学(生活科学)に興味をもったということです。家庭科教育法の授業や教育実習で家庭科の魅力を再確認したとはいえ、民間企業に就職するかどうか、教員になるか、さらには進学するかどうかで悩まれたそうです。藤田さんの卒論は、司会の私は今も覚えていますが、「ダイエットブームの実態と背景――女性雑誌を通しての考察」というとても立派なものでした。そして1年の出版社での勤務を経て大学院に進学されます。博士論文は「青年期の身体像と食生活行動――日常知と学校知の観点からの家庭科教育の検討」です。投稿論文や書籍の分担執筆を経験して、研究が形になることの喜びを知る一方で、博士論文をどう書いたら良いか「ジタバタ」されたのだそうです。ご本人曰く「1年間の高学歴ワーキングプア」を経て、名古屋女子大学家政学部に採用され、その後現在のお仕事に至っておいでです。学生が教職を志望するかどうかに、大学教員が大きく影響することを実感し、家庭科教員免許をとるメリット、それから生活科学を専門とした研究職につくメリットを話されました。現在は東京学芸大学で、初等家庭科教育法、中等家庭科教育法、事前事後指導、入門セミナー、教職実践演習などを担当されています。東京にある教員養成の基幹大学の教員として、複数の学内プロジェクトへの参加、附属校と連携した授業実践的な研究、附属校の研究会(校内研、公開研)での指導助言、公立の学校での研究会の講師、教育実習訪問指導などに携わりつつ、学会の役員を務めたり、最先端の研究業績を出し続けることも求められるということで、司会としても、その大変さはとてもよくわかります。大変なことも多いですが、今のポストでは、大学での学びを活かすことができ、大学の先輩方とのつながりも非常に深く、なにより研究を社会(特に学校教育)に還元できるというメリットがあるということです。牧野カツコ先生に学び、その後石井クンツ先生のご指導を受けました。
それぞれ立派になさっていることだなあと心から応援したく思いました。
16時より大学本館103室にて花経会のご厚意でおいしいお菓子をいただき茶話会が開催されました。
(永瀬伸子 記)

学生の感想

「どの方も大学時代に教授の言葉や授業の面白さをきっかけに将来の方向性をさだめていらっしゃり、大学生活の重要性を感じるとともに、どこで自分の興味がみつかるかわからないなと感じました」/「なるべく早く就職したいと思っていましたが、こんな生き方、こんな道もあるのだなと気づかされ新鮮なものでした。専門をつきつめそれをダイレクトに生かせるというのも魅力的だと思いました。」/「なんとなく生き急いで、じっくり物事を考えたり調べたりとすることを避けがちな自分とちがって見習いたいと思いました」/「3人の先輩の話を聞き、研究というものへのイメージがかわった」/「一度民間企業にいってから大学院に戻るという道をはじめて考えることができた」/「研究者でも仕事と子育ての両立ができるとわかった」/「長く時間がかかると知った」/「就職してからも大学に戻るということを先生がサポートしてくださる体制があることを知り安心した」/「先輩がかっこいいなと思った」

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